キャッシングの取り立ては、その消費者金融の社員さんによって、それぞれのスタイルがあります。特に重度の遅延・延滞をしている人は大抵「強者」なので、彼らに払わせるというのは、一種の職人芸なのです。
そのため、通り一遍のマニュアルにはないような、「その社員さん独自の督促スタイル」というのがあるんですね。そして、利用者との相性もあるので、高額の回収をするグループでは「利用者に合ったスタイルの社員さんをつける」ということも、しばしばあるようです。
キャッシングの督促のスタイルは、大別すると2通りに別れます。
です。「北風…厳しい」「太陽…優しい」ということですね。大半は「厳しい」方が有効ですが、逆に「優しい」取り立てが有効な場合もあります。
厳しいと言っても、昔のサラ金・街金がやっていたような「脅迫的・暴力的」な取り立てはしません。あくまで「強めの口調」というだけです。
これについては、『アイフル元社員の激白』などの本を書かれている、アイフルの元トップセールスマンだった、「かさこ」さんのブログが参考になります。そこでは「債務者を泣かせてしまった話」などの実例で、厳しい督促がどういう内容か、解説されています。
泣かせてしまったと言っても、先にも書いた通り「脅迫的なこと」を言ったわけではありません。あくまで理詰めで淡々と「返済しないとどうなるか」という「事実を説明」しているだけです。
その実例の場合は、弟さんの借金の連帯保証人になったお姉さんに督促をされています。そして「何で弟にかけないのよ!」と激昂するお姉さんに対し「連帯保証人は、本人とまったく同じ責任があるんです」ということを、淡々と説明されています。
最初は「弁護士を呼ぶわよ!」と強い態度だったお姉さんも、明らかに自分が法的に不利だということがわかり、最後は泣き崩れてしまいます。あまり後味のいい話ではないですし、そのアイフルの元社員さんも、もちろん気持ちよくはなかったでしょう。
取り立て自体は、決して気持ちのいい話ではありませんが、世間のイメージとは違い、特に結果を出せる消費者金融の社員は「極めて理知的な取り立てをする」ということがわかります。決して声を荒げたりはしないのです。
声を荒げたり、怒鳴ったりする社員は、大抵成績が悪いと、そのアイフルの元社員さんも書かれていました。成績が悪いということは「だんだんそのスタイルは消えていく」ということで、その当時から10年ほど経った現在、確かにほとんどゼロになっています。
逆に「太陽型」の厳しくない取り立てとはどんな内容か―。これは、最近の本である『督促OL』などを読むとわかります。これは若い女性社員さんが書かれたものですが、この方は厳しい催促は苦手で、逆にやさしく話しかけることで、督促に成功する場面が多いようです。
たとえば、生活が完全に破綻し、一人で山奥で肉体労働しながら、ただひたすら借金返済だけをしている男性。この男性とは、たとえばこんなやり取りがあったそうです。
こういうと男性は一瞬驚いて、「ありがとう。お姉さんみたいな若い女の子に、こんな風にやさしく言ってもらったの、何年ぶりかなあ…」と言われたそうです。
そして、その時あったお金を、少額ではあってもとりあえず全部払ってくれたそうです(記憶に頼って書いているので、言葉が一部違うかもしれませんが、内容は合っています)。
このように、債務者の方によっては「むしろ優しくされた方が、払う気になる」という場合もあるんですね。割合としては少ないのですが、状況によってはそういう督促スタイルを取る、あるいはそういうスタッフさんを担当させる、という方がいいわけです。
意外かも知れませんが、実は大手のキャッシング業者ではない「街金・サラ金」も、「太陽型」が多いのです。街金を飛び越えて「ヤミ金」に完全に入っている業者も、意外なほどに太陽型です。
理由は、こういう業者を頼る人は「他に頼れる人がいない」からです。家族や友達を頼れるなら、闇金業者を頼ったりしませんからね。
そして、他に話し相手もいないこうした債務者の人々は、闇金業者が親身になって生活の相談に乗ってくれると、それで親近感を持つのです。これは彼らの取り立てのテクニックというだけではなく、実際、一部では確かな人間関係になっているのです。
こうした「債務者と闇金業者の人間関係」については、『闇金ウシジマくん』を読むとわかります。主人公がヤミ金だからというのもあるのですが、ヤミ金のおかげで生活が救われているという人も、ごくごく一部いることがわかります。
(これは『闇金ウシジマくん』だけではなく、社会学者の開沼博氏なども指摘されています)
…というように、一口に借金の取り立てといっても、そこにはいろいろな人間関係があったり、交渉術があったり、「本当の社会悪とは何か」という、社会学のテーマすらあるわけです。
消費者金融や銀行カードローンで単純にお金を借りる分には、特に関係ありませんし、むしろ遅延・延滞せず、まったく関係なく終わるのが一番いいのですが、キャッシングの世界に興味がある方に、参考にしていただけたら幸いです。
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